「オルゴールのくるくるちゃん」こみねゆら(講談社/2015年9月発行)
セルロイド人形のくるくるちゃんは、昔、小さな女の子と暮らしていました。 その頃、くるくるちゃんはミトちゃんと呼ばれていました。 今、くるくるちゃんは博物館のオルゴール人形として踊っています。 でも、くるくるちゃんは回り過ぎたり、ふわりと浮き上がったり、上手く踊れません。 他の4人のオルゴール人形は陶器で出来ていたのに、くるくるちゃんはセルロイドで、 羽のように軽かったからです。 くるくるちゃんは上手に踊れなかったけど、楽しく過ごしていました。 ところがある日、新しい陶器のお人形がやってきて、くるくるちゃんは窓辺のかごに住むことになりました。 ある風の強い日、くるくるちゃんは窓の外に落ちてしまいました。 やがて、秋になり、冬になりました。 ある日、くるくるちゃんは通りかかった犬のしっぽに、「えいっ」と手を伸ばしてしがみつきました…… そして……、くるくるちゃんは昔小さな女の子だった人と再会したのでした。 お人形さんの冒険物語です。 可愛いお人形たちが並んだ表紙を開くと、見返しはピンクのバラ模様。 林の小路の先に洋館があり、その建物がくるくるちゃんが住んでいる博物館です。 冒頭部分から、わくわくしますね。 くるくるちゃんも陶器のオルゴール人形たちも愛らしいです。 お人形たちのドレスもステキです。 くるくるちゃんが、窓辺のかごに移される時、 陶器の人形たちが別れを悲しんで泣いてくれるところが良いな〜と思いました。 くるくるちゃんは踊りは上手ではなかったけど、他のお人形たちと仲良しだったのですね。 クライマックス、くるくるちゃんが犬のしっぽにしがみつく場面はすごい! くるくるちゃんが懐かしい人に再び巡り会うのは、クリスマスの季節です。 外は雪が降っていても、クリスマス・ツリーの置かれた部屋はとても暖かく感じます。 可愛らしくて、ロマンティックで、少しドキドキする絵本です。 ただ、一つだけ気になったのですが… ミトちゃんが博物館に来るようになった経緯が謎なのです。 女の子がどこかに置き忘れてしまったのか、 お母さんに処分されてしまったのか、 おうちの窓から落ちてしまったのか…? 何もかも明らかにされなければならない、ということはないのですが、 私は気になってしまいました…(2015/10/13) ◇柊のイラストは「無料素材倶楽部様」からお借りしました。 |