お人形の視点で、お人形が幸せになるまでを描いた絵本です。
『マリーのお人形』ルイーズ・ファティオ文 ロジャー・デュボアザン絵 江國香織・訳(BL出版/2007年9月発行) パリの骨董品屋さんに、とても古くて高価なアンティークドールが住んでいました。 たいそう美しいそのお人形は、色褪せた赤いシルクのドレスを着て、可愛い靴を履いていて、 金色の巻き毛の上には羽飾りのついた帽子を被っていました。 お人形は長い間、骨董品店の棚に座っていたので、孤独でした。 「こんなのお人形の暮らしじゃないわ」とため息をつき、 一緒に遊べる小さな女の子がいてくれたら、と思いました。 ある日、とうとう、年取ったご婦人が店にやってきて、お人形を買うことに決めました。 お人形は嬉しさで一杯でした。 ところが、新しいおうちでお人形が見たのは、 骨董品店そっくりの、古い高価な品がたくさん並んだ部屋でした。 明らかに子どもがいない家で、お人形は泣き出しそうになりました。 やがて、大変な事件が起きました! その家で飼われていたダックスフントが、お人形をくわえて外へ飛び出したのです。 ボロボロになったお人形が歩道に横たわっていると、一人の少女が通り掛かりました。 女の子の名前はマリー。 郵便屋さんの娘で、ずっと骨董品店のウインドウからお人形を眺めていた女の子でした。 マリーはお人形にキスをして、家に連れて帰りました… 幸せを夢見ていた美しく高価なアンティークドールが長い時を経て、苦難に遭いながら、 やがて小さな女の子と出会い、幸せになるまでのお話です。 犬に振り回されるシーンはとても胸が痛みました。(お人形好きの方には、閲覧注意です!) でも、そのお蔭でマリーに出会えたのですから、「わんこ、グッジョブ!」なのかしら… お人形の視点から描かれているところが面白いと思いました。 特に、骨董品屋さんで、「こんなのお人形の暮らしじゃないわ」とぼやくシーンがお気に入りです。 さて、お人形はマリーと一緒に人形や妖精や動物が出てくる本を読み、 おやすみなさいのキスをされ、ベッドに寝かしつけて貰います。 お姫様のようでなくても、可愛がられることがお人形の一番の幸せなのですね。(2017/07/18記) |