「もりのにんぎょう」朝比奈かおる(文溪堂)
森に置き去りにされた、古い人形。 服はボロボロで、手足からは綿がはみ出ていました。 色々な虫や動物たちがやってきます。 ちょうちょは「お友達にならない?」と聞きますが、人形は答えません。 秋にあり、冬になり、森は雪に閉ざされます。 一匹の犬が走ってきて、人形を掘り出し、家へ持ち帰りました。 犬の飼い主の女の子とお母さんは、人形を捨てるのは可哀そうだと思いました。 二人は人形を直してあげる事にしました。 石けんで洗って、ブラシで髪をとかし、 端切れでお洋服も作ります。 そして何日か経ち… 古いボロボロの人形は、新しくすてきなお人形に生まれ変わりました! 人形に命はありませんが、死と再生を感じることの出来る物語です。 また、季節の移ろいと動植物が淡い色彩で美しく描かれていますので、 森の中を散策しているようなひと時を味わうことができます。 そして何と言っても、お人形がすばらしく可愛い!! こちらはいわゆる「抱き人形」だと思います。 そして、大切に手作りされた印象があります。 モヘアの髪、ガラスではない瞳(書き目?)で日本的な優しい表情です。 柔らかな布地のドレスはピンク色、胸元の白いレースは綿レースでしょうか? 体には綿が詰められていて、 抱っこした時の柔らかさや温かさまでが伝わってくるように感じます。 こんなに可愛いお人形が、どうして森に置き去りにされてしまったのでしょうか? 古くなったおもちゃをまとめて捨てたのでしょうか? (お人形の横には積み木のようなおもちゃも散らばっています) 本文には「捨てられたお人形」という表現はありません。 木の根元に座らせられていたという事は、 子供が森で遊んでいる内に忘れてしまったのかもしれませんね。 もしそうなら、大切なお人形をなくしてしまったと気がついた時、 どんなに悲しかったことでしょう! ラスト、雪解けの季節となり、 女の子に連れられてお人形が森へ向かうシーンは、胸がジーンとします。 女の子もお母さんも、とても優しい。 お人形は優しい気持ちに包まれ、本当に幸福そうに見えました。 お人形、特に大きいお人形がお好きな方には、絶賛お勧め絵本です♪(2012/12/15) |